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誰かの死の味 — Epoch SF短編小説の挿絵
SFバイオテクノロジー・遺伝子

誰かの死の味

その記憶は、電車の中で突然始まった。


 松本蒼は通勤ラッシュの車内で吊り革を握っていた。いつもと同じ朝だった。次の瞬間——景色が変わった。


 病院の白い廊下。蛍光灯の光。足元に濡れたタイルの反射。自分の手ではない手が、廊下の手すりを掴んでいる。手が震えている。廊下の先に、ガラスで仕切られた部屋がある。ベッドに誰かが横たわっている。


 知らない人間だ。でも、泣きたかった。


 泣きたい感情は——蒼のものではなかった。


 電車が駅に滑り込み、ドアが開いた瞬間に、記憶は消えた。蒼は吊り革を握ったまま、二三秒、動けなかった。


 「感染した」と蒼は思った。

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#SF短編#記憶感染#バイオテクノロジー#Epoch#近未来