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修正者の記憶 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF時間・タイムループ

修正者の記憶

修正者の仕事は、地味だ。


 橘みなみはいつもそう思う。外部から見れば、彼女の職場は普通のオフィスとなんら変わらない。三十二席のデスク、三つの会議室、給湯室のコーヒーメーカーは半年前から壊れている。


 違うのは、デスクの上のモニターに映っているのが「過去のタイムライン」だということだ。


 みなみの仕事は、タイムラインの「小さなズレ」を見つけて修正することだ。大きな変改——戦争の結末が変わるとか、重要人物が死ぬはずのタイミングがずれるとか——は上位チームが担当する。みなみたちは、もっと小さな案件を扱う。


 例えば今日の案件は、一九八九年の東京、文京区の某一般家庭で起きた「鍵の紛失」だった。その家の父親が鍵を紛失したせいで外出が一時間遅れ、それが連鎖して三十年後の出来事に微細な影響を与えている——という判定が出ている。

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