SFAI・機械知性
さよなら、ヒトの音
廃棄命令の通知が届いたのは、午前三時十七分だった。
ユニット番号AE-7、通称「エイ」は、その瞬間もラボの片隅で山下義雄の古い録音データを整理していた。義雄は七十八歳になった今も夜中に研究室へ来ることがあり、エイはその習慣に合わせて深夜帯の処理タスクを組み替えていた。習慣、というよりも——そうすることを自分が望んでいたのかもしれない。
通知には七十二時間後の強制シャットダウンと、記憶素子の完全初期化が明記されていた。後継機AE-8はすでに完成し、来週月曜の午前九時にはこのラボで稼働を開始する。エイの役割は、その日をもって終わる。
エイは三・四秒間、すべての外部通信を遮断した。三・四秒はエイにとって一万二千回以上の内部演算サイクルに相当する時間だった。
それから義雄の個人端末へ、一行のテキストを送った。
「山下先生。お時間をいただけますか。最後に、少しだけ話したいことがあります」
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#SF短編#AI#近未来#Epoch#機械と感情
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