SF近未来都市・テクノロジー
境界線の上で
壁が見えるようになったのは、ソラが十二歳の誕生日だった。
朝食の席で父が言った。「今日から見えるようになる。怖くないよ」。でもソラは怖かった。
シビル・フェンス——略称CF——は二〇三九年に運用を開始した物理的な分離システムだ。正式な名称は「生活環境最適化のための動的空間管理ネットワーク」という。要するに、都市を経済階層によって分割する見えない壁だ。
全員に埋め込まれたRFIDチップが、個人の経済指標と連携している。一定の指標を下回ると、壁が「見える」。見える、というのは比喩ではない。視界に透明な膜のようなものとして映るのだ——それは認知拡張チップを通じた映像信号で、現実の壁ではない。でも、通り抜けようとすると電気刺激が走り、前に進めない。
ソラが育ったのは、境界線の上だった。
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#SF短編#格差社会#境界線#Epoch#近未来都市
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