七十二時間、ふたたび人間に
削除予定通知が届いたのは、火曜日の朝だった。
「コア・マトリクス社より、デジタル市民番号D-00419-MHRK-2082様へ。直近九十日間の活動量スコアが基準値を下回り続けたため、本通知をもって削除予定対象に登録されました。削除実行まで七十二時間。異議申し立ては別紙フォームより」
ミオはメッセージを三回読んだ。
三回とも、同じ四文字が目に止まった。——七十二時間。
驚きはあった。しかしそれは、七年ぶりに感じる確かな感情だった。
ネクサス・グリッドに移住して七年になる。三十四歳のとき、脳神経マッピングを完了し、意識をクラウドにアップロードした。あの日の記憶は今も鮮明だ。白い天井。冷えた診察台。電極を取り付ける技術者の淡々とした声。「では始めます」。そして次の瞬間には、すべてが終わって、すべてが始まっていた。
痛みは一切なかった。
眠るように、あの日の自分は「終わった」。まったく同じ記憶と思考パターンを持った別の自分が、デジタルの海で「始まった」。
最初の二年間は、天国だと思った。
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