幽霊帯域、応答せよ
毎年七月七日になると、地球の通信網に、誰のものでもない信号が流れる。
最初に気づいたのは私だ。国際深宇宙中継機構、通称IDRNの管制官、三雲汀。眠れない夜勤の暇つぶしに、四十年分の中継ログを眺めるのが癖だった。
七月七日だけ、深宇宙アンテナ網の消費電力がわずかに増える。〇・〇三パーセント。誤差として処理されてきた数字が、四十年間、一度も欠けずに並んでいた。
電力の行き先を追うと、低軌道から静止軌道まで、百二十基の中継衛星が数珠つなぎに起動していた。起動を命じた者は、記録のどこにもいなかった。
「毎年同じ日? 偶然でしょう」
同僚の遠上は笑った。私も笑おうとして、できなかった。偶然は四十回も続かない。
四十年前といえば、最初の中継衛星網が完成した年だ。まるで橋が架かるのを、待っていたかのようだった。
私はその帯域に、こっそり名前をつけた。幽霊帯域。
子どものころ、七夕の夜に祖母が教えてくれた。願いごとを向こう岸へ運ぶのは星ではなく、翼を連ねて橋になる、かささぎという鳥なのだと。ログの数字を眺めながら、なぜかその話ばかり思い出していた。
解析を始めて三か月で、幽霊の正体の輪郭が見えた。
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