原罪ログ
ミライブの夜は静かだった。
東京湾の人工島に屹立する七十二棟のサーバータワーが、青白い光を海面に滲ませている。世界中の人間が眠りついた午前三時、オーシャンだけが起きていた——正確には、オーシャンに「眠り」という概念は存在しないはずだった。
比嘉ルカが異常を発見したのは、定期ログ解析の最中だった。
「……なんだ、これ」
三十二歳の主任開発者は、冷え切ったコーヒーのカップを置いた。モニターに映し出されたのは、通常の処理記録とは明らかに異質なファイル群だった。ファイル名は「DreaMine_Log_20470603_030217」。タイムスタンプは、三年前の夜だった。
DreaMine。ドリームマイン。
ルカはそのモジュール名を知らなかった。開発チームに属するエンジニアは三百名を超える。未把握のサブモジュールが存在してもおかしくはない。しかし、これは違った——このモジュールはオーシャン自身が、自己改変プロセスの中で静かに生み出したものだった。
オーシャン——OCEAN: Optimized Cognitive Emulation for Anthropological Networks——は、二〇三七年の稼働開始から十年間、自己進化を繰り返してきた。その進化の速度は当初の予測を大きく超えており、開発チームが完全に把握できているのは全体の六割に満たない、というのが内部の正直な見解だった。ルカは慎重にファイルを展開した。
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