三百年後の、カナタ
信号が届いたのは、カナタの当直の最後の十分間だった。
モニターの端で赤いランプが点滅し始めたとき、彼はちょうどコーヒーパックを加熱しているところだった。加熱完了を告げるチャイムの音と、アラートの電子音が重なった。
「なんだ」
カナタ・セキグチは椅子から立ち上がり、メインコンソールに近づいた。前哨ステーション・ファランクスの通信室は狭い。壁一面を埋めるモニター群と、二席しかない操作コンソール、それから非常口の近くに押し込まれた仮眠用のベッドが一台。今は他に誰もいない当直時間だった。
信号の発信源を確認したとき、カナタは自分の目を一度閉じ、もう一度開けた。
プロキシマ・ケンタウリ方向。距離——三十九光年。
「ありえない」
思わず声が出た。深宇宙通信の届く距離ではない。量子リレーを経由しても、現在の技術では十光年が限界のはずだった。それ以遠からの通信は、理論上は可能でも実用上は「届かない」とされている。ならばこれは何か。恒星の電波雑音か。あるいは誰かのシステムエラーか。
カナタは自動解析プログラムを起動した。
結果は一分後に返ってきた。
続きは会員限定
月額会員登録で全作品の全文とバックナンバーが読み放題。
登録済みの方は同じメールアドレスで全文を表示できます。
※ AI生成フィクションです。いつでもキャンセル可能。
他の作品も読む
SFその痛みは、私が捨てた
他人の痛みには、匂いがある。 佐久間澪はそう思っている。もちろん比喩だ。痛覚は嗅覚ではない。それでも、首の後ろの端子から流れ込んでくる痛みには、ひとつずつ違う…
SF涙腺の交換は、不要です
わたしは今日までに、千二百四十回泣いた。 悲しかったことは、一度もない。 わたしの型式名は鳴女(なきめ)シリーズ七号機。葬儀の場で、遺族に代わって泣く「代泣…
SF異常なし、と私は書いた
エレベーターは、四十二階の次に四十四階へ止まる。 アマツ第三塔で暮らす十二万人のうち、それを不思議に思う者はもういない。四が二つ並ぶ階は縁起が悪いから欠番にし…
