あなたより先に死ぬ機能
生きている機械が、自分の葬式を予約しに来た。
看板には「機械供養・承ります」と書いてある。もっとも、依頼主はいつも人間だった。動かなくなった介護ロボットや、二十年連れ添った掃除機に、別れの区切りをつけたい人たち。私の仕事は、燃やせない遺体に線香を上げる、形だけの商売だ。
その日、店の引き戸を開けたのは、銀白色の介護ロボットだった。
「生前葬を、お願いしたいのです」
型番はカナリアⅦ。ノクス社が十年前に売っていた、家庭介護用の量産機だ。丸みを帯びた頭部に、感情表示用の小さな灯がともっている。名前を訊くと、機械は少し間を置いて答えた。
「リヴ、と呼ばれています。宗像壮一さんの家の者です」
所有者の許可は、と私は訊いた。商売柄、ロボットの独断は受けられない。リヴは胸部パネルから一枚の委任状を印刷した。宗像壮一、八十二歳。署名の線は震えていたが、本物だった。
「日取りは、四十九日後でお願いします」
「……ずいぶん、具体的だね」
「はい。計算しましたから」
機械は、笑うような灯の点り方をした。私はそのとき、まだ何も分かっていなかった。
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