七十七光年のごめんなさい
銀河の果てから、最初の言葉が届いた。
それは「ごめんなさい」だった。
二〇四九年の春、深宇宙電波干渉計〈ユメミ〉が、こと座の方角に異常な信号を捉えた。地球から七十七光年。発信源は、名もなき赤い星のあたりにあった。
信号は規則正しく、雑音ではありえなかった。三日かけて復号した解析チームは、全員が言葉を失った。
メッセージは、たった一語。
それが、人類の知るあらゆる言語で記されていた。
日本語で、英語で、アラビア語で。話者の絶えたシュメール語で、アイヌ語で、見たこともない記号の連なりで。六千九百九種類。地球上で記録された、すべての言語だった。
そのどれもが、同じ意味を持っていた。
「ごめんなさい」
世界は静かに混乱した。なぜ最初の接触が、謝罪なのか。彼らは何を詫びているのか。
侵略の前触れだと叫ぶ者がいた。神からの啓示だと祈る者がいた。だが多くの人は、ただ夜空を見上げて、言葉もなく立ちつくした。
言語学者の透子は、解析室の隅でその一覧を見つめていた。胸の奥が、ざわついて仕方なかった。
「おかしいんです」
透子は同僚に言った。
「これだけの言語を、正確に書ける文明なんて」
「だから高度なんだろう。何光年も先から、声を届けるくらいだ」
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