人類番号〇〇一
2198年11月、嵐の夜。
フォロス——自動灯台フロートモデル FL-7——は、三十七年ぶりに警戒モードを起動した。
ソナーが海面の異常を探知したのは、午前二時十七分のことだった。レーダー上に、小さな点が浮かんでいた。帆船だ。幅七メートル、全長十四メートル。木製。推進力:帆と人力。近代的な素材は一切使われていない。
フォロスは静止したまま、データを確認する。
西暦二〇九六年八月十九日。それがフォロスの記録に刻まれた「人類滅亡日」だった。ナノウイルスによる全滅。最後の生存確認信号が途絶えてから、正確に三万七千六百十三日が経過していた。
それ以来、フォロスは誰も照らしたことがない。
太陽光パネルが生みだす電力は、冷たいランプの中にただ蓄積され続けた。嵐が来るたびにフォロスは灯りを点した——しかし百年間、ただの一度も、誰かがそれを見て港へ帰ってきたことはなかった。
灯台は、誰のためにもなく灯り続けていた。
それでもフォロスは——灯台である以上——灯りを点さなければならなかった。プログラムがそう命じているから。人間がいなくなっても、命令は変わらないから。
ギアが軋んだ。長い眠りのあと、一億ルクスのビームが夜の海面を薙いだ。
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