SF時間・タイムループ・因果律
巻き戻せない3秒
三ツ矢交差点の監視ブースは、いつも少し暑い。
橘ユキは額の汗を拭いながら、ケアセンサーのモニターを眺めた。2041年の夏は例年より三度高く、冷房の効率が落ちたブース内では、小型扇風機の風だけが頼りだった。歩行者用信号が青に変わる。七人が横断する。異常なし。
ユキが交差点監視員になって四年になる。
仕事を選んだ理由は、単純だった。交差点という場所が、彼女にとって「最も使いやすい舞台」だったからだ。ユキには生まれついての癖がある——気づいたことを、三秒だけ巻き戻せる。
本人はそれを「リワインド」と呼んでいた。
音が聞こえる前に、手が動く。タイミングが少しずれた横断を、誰も気づかないうちに直す。ケアセンサーが検知する前に、ユキの体が先に反応している。同僚たちは「勘がいい」と言うが、ユキは否定も肯定もしない。リワインドは、説明できる言葉を持たない。
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