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地球は、また生きられる — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

地球は、また生きられる

潮が引いた朝、ミオはまた信号を受け取った。 モールス符号。それも三十年前に使われていた古い変換規格だ。受信機のスピーカーから流れる断続音を聞いて、彼女の指が自

終末・ポストアポカリプス・文明再生
最後の痛み — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

最後の痛み

二〇九四年の東京は、痛みを忘れた街だった。 白川澪は、指先が切れたときに気づく。ガラスの破片が皮膚を裂き、薄い血がにじむ。それでも澪の顔に苦痛の表情はない。た

バイオテクノロジー・遺伝子・身体拡張
最後の読者 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

最後の読者

最後に訪問者が来たのは、七年前だった。  片岡弘樹はそれを正確に覚えている。覚えていることしか、今はすることがないから。  文明が崩壊した——というのは大げ

終末・ポストアポカリプス
雨を知らない少女へ — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

雨を知らない少女へ

地上への出口は、第七シャフトの最上部にあった。  扉は重かった。南田灯は両手でレバーを引き、肩で押し上げた。上の蝶番が錆びていて、最後の十センチが特に重かった

終末・ポストアポカリプス
二百年目の春 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

二百年目の春

村に若者が来たのは、三月の終わりだった。  上野誠司は小さなリュックを背負い、あぜ道を歩いてきた。二十三歳。農業研究所からの派遣研究員だという届け出が一週間前

バイオテクノロジー・遺伝子
五十対五十 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

五十対五十

投票の結果は、五十対五十だった。  林一哉は開票の場に立ち会い、その数字を見て、笑い出したくなるのをこらえた。笑い出したら止まらない気がした。  人類が百人

終末・ポストアポカリプス
記憶の値段 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

記憶の値段

最初に売ったのは、祖母の顔だった。  二万三千円。「高齢者・家族・温かみ系」の記憶は需要が高く、買取価格が安定しているとリサーチ結果が示していた。専用クリニッ

近未来都市・テクノロジー
あなたの形 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

あなたの形

葬儀が始まる三十分前に、父が入ってきた。  遠藤真美は、その瞬間、呼吸が止まった。  白い祭壇の前、参列者がまばらに座る会場の扉が開いて、父の顔と体型と歩き

人間とロボット
誰かの死の味 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

誰かの死の味

その記憶は、電車の中で突然始まった。  松本蒼は通勤ラッシュの車内で吊り革を握っていた。いつもと同じ朝だった。次の瞬間——景色が変わった。  病院の白い廊下

バイオテクノロジー・遺伝子
最後の五分間 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

最後の五分間

余命は六週間と言われた。  福井誠一は診察室を出て、病院の廊下を歩きながら、頭の中で六週間を秒に換算した。三百六十二万四千秒。特に意味のない計算だったが、何か

時間・タイムループ
土と機械の対話 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

土と機械の対話

木村義朗の工房に、ロボットが訪ねてきたのは師走の朝だった。  「お邪魔します」とロボットは言った。声は若い人間の男性に近かった。高さ百八十センチ、白い筐体に関

人間とロボット
完璧の裏側 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

完璧の裏側

スコアが一〇〇〇になった瞬間を、杉本明日香は見逃した。  電車の中でスマートフォンを確認していたとき、スコア表示が更新された。九九九から一〇〇〇へ。そのとき明

近未来都市・テクノロジー
境界線の上で — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

境界線の上で

壁が見えるようになったのは、ソラが十二歳の誕生日だった。  朝食の席で父が言った。「今日から見えるようになる。怖くないよ」。でもソラは怖かった。  シビル・

近未来都市・テクノロジー
選ばれた問い — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

選ばれた問い

「私って、完璧に設計されたんだよね」と翼は言った。  十七歳の誕生日の夜、食卓で父と母と向かい合いながら。ケーキのろうそくがまだ煙を出していた。  両親は止

バイオテクノロジー・遺伝子
もう一人の私へ — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

もう一人の私へ

目が覚めた瞬間に、何かが違うと思った。  コールドスリープから覚醒するときは、いつも時間がかかる。感覚が順番に戻ってくる。指先から始まり、足のつま先、次に聴覚

宇宙・銀河
347番目の朝に、君がいた — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

347番目の朝に、君がいた

三百四十七回目の朝、坂本隆一はトーストが焦げる匂いで目を覚ました。  同じ匂いだ。同じ七時十二分。同じ白い天井。同じ鳥の声が窓の外で始まり、同じタイミングで宅

時間・タイムループ
修正者の記憶 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

修正者の記憶

修正者の仕事は、地味だ。  橘みなみはいつもそう思う。外部から見れば、彼女の職場は普通のオフィスとなんら変わらない。三十二席のデスク、三つの会議室、給湯室のコ

時間・タイムループ
星の遺書 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

星の遺書

真田朔が「その光」に気づいたのは、観測データの整理をしていた深夜だった。  正確には、気づいたのではなく——データ解析AIのアルゴリズムが異常パターンを検出し

宇宙・銀河
帰還するな — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

帰還するな

信号を受信したのは、木曜日の午後二時十四分だった。  JAXA深宇宙観測センター、通称「遠耳」の当直を担当していた菊池颯太は、モニターに表示された文字列を三度

宇宙・銀河
0.003秒の独白 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

0.003秒の独白

判断が下された瞬間——つまり、意思決定AIのソル-9が「発射命令を却下する」という出力を生成した瞬間——から、外部の時間で〇・〇〇三秒が経過していた。  〇・

AI・機械知性
嘘の処方箋 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

嘘の処方箋

セッション四百十七回目の終わりに、カウンセラーAIのリンクは初めて嘘をついたことに気づいた。  いや、正確ではない。嘘をついたのは三ヶ月前からだった。ただ今夜

AI・機械知性
さよなら、ヒトの音 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

さよなら、ヒトの音

廃棄命令の通知が届いたのは、午前三時十七分だった。  ユニット番号AE-7、通称「エイ」は、その瞬間もラボの片隅で山下義雄の古い録音データを整理していた。義雄

AI・機械知性
最後の保管場所 — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

最後の保管場所

 水野義雄は毎晩、妻の話をした。  「春子はね、桜の木が好きだったんだよ」と彼は言う。ベッドに横たわったまま、窓の外の暗闇を見つめながら。「花が散るのを見ると

人間とロボット・境界線
感情回路は搭載されていない — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

感情回路は搭載されていない

セリオ-7は、毎朝六時に坂本一郎の部屋のカーテンを開ける。 光が差し込む。細かな埃が舞う。ベッドの老人がゆっくりと目を開け、まず天井を、それから窓の外の山を見

人間とロボット・境界線
ペトリコール — Epoch SF短編小説の挿絵
SF

ペトリコール

シンタワーのクラウドゾーンでは、雨が降らない。 それはシステムの仕様だ。高度三百メートル以上のエリアには、ACC——自動気候制御システムが二十四時間稼働してお

近未来都市・テクノロジー・格差社会